『クイズとき子さん(朗読/絵コンテ:タナカカツキ バージョン)』は絶対に見るべきアニメである。

 

地球上に住む皆さんに知ってほしいアニメ(?)がある。

それは、

 

クイズとき子さん(朗読/絵コンテ:タナカカツキ バージョン)

chuun.ctv.co.jp

 

である。

 

 

 

① クイズとき子さんとは 

『クイズとき子さん』は中京テレビで放送されていたアニメである。

『コップのフチ子』や『オッス!トン子ちゃん』などで有名なタナカカツキ先生の原作をもとに作られたアニメで、クイズの作出を生業とする主人公とき子さん(CV: 南條愛乃さん)の悩みやとき子さんを取り巻く人間関係を描いた物語となっている。

 

タナカカツキ先生↓↓

chuun.ctv.co.jp

 

残念ながら、この色付きのアニメのほうは40話で配信がストップしてしまっているが、タナカカツキ先生の原作絵コンテを使用した朗読は最終話まですべて中京テレビのサイトもしくはアプリ(Chuun(チューン)中京テレビ)で配信されている。

 

この原作絵コンテの朗読が、最高すぎるのだ。

 

 

② 原作絵コンテ朗読の魅力

まず、タナカカツキ先生の朗読がすごい。

もし最初に載せているリンクをクリックして一話を見た方は分かっていると思うが、この原作絵コンテは、CVすべてタナカカツキ、となっている(色付きアニメでは編集長のみ)。

これがまたすごい。

結構な数の人間が出てくるのだが、演技力もすごいし使い分けもすごい。

さらに言うとすべて関西弁であり、ノリやリズムがとても心地良い。

ずっと聞いていると、タナカカツキ先生の声なのに、なぜかとき子さんやお母さんはかわいく感じてくる始末である。

 

次に、キャラクターが魅力的。

登場するキャラクターは、とき子さんというクイズの作出の仕事をしている女性、その家族、そして主人公に想いを寄せる二人の男性。

それぞれが本当にキャラが立っているというか、それぞれが自分の考え方を持っていて、それぞれがちゃんと違う「人間」だと感じさせられた。

登場するキャラクターたちは、私たち自身や私たちの身の回りでよく見聞きするような悩みや想いを持っており、とても親近感を持つことができるのだ。

個人的には、歌子さん(母親の友人)なんかはもうとてもいいキャラで、お話を盛り上げるうえでいいアクセントとなっている。特にタナカカツキ先生の声の使い方がやばくて好き。

 

そして、なんといってもストーリー構成がすごすぎる。

本作品の一話分は5~10分程度と短いのにも関わらず、一話一話の起承転結があり、オチまで必ずつけている。

さすがタナカカツキ先生。関西の血がそうさせるのだろうか。

そして、素晴らしいのが全体の構成だ。

 

※ここからはなるべく作品の概要のみ書きますが、一部ネタバレを含むのでご注意ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

本作品は、クイズがテーマかと思わせて、本当のテーマは別のところにある。

先に結論を言ってしまうと、「家族愛」や「自立」がテーマだ。と思う。

 

実際には様々なテーマが扱われており(クイズ、OCD、母親、恋、など)、見ていくとどんどん広がっていく風呂敷をどうやって収束していくのか気になってつい次の回を見てしまう、という凄まじい引力が本作品には備わっている。

何よりすごいのが、この様々なテーマを一つの物語の中に素晴らしく配置している点である。

 

主人公であるとき子さんは、幼いころから「OCD(強迫性障害)」を患っており、その症状(壁に掛けてある絵の歪みが気になる等、歪みなどに敏感)に悩まされている。

しかし、その能力もうまくコントロールすることで、小学生の自由研究で独創性を発揮したり、クイズ作出の仕事に就くなど、うまく生活を送ることができていた。

生活に支障をきたすこともあるOCDを患いながらも、仕事に恋に、充実した生活を送っていたとき子さん。

しかし、その生活は、母親の失踪により急変していってしまう。

 

「宇宙意識の会」という怪しげな団体に入った母親。

密かに恋をしていた、同じ症状を持つ元同級生・平田くんとの再会。

矢崎さんという恋人がいながらも、平田くんに惹かれる気持ち。

「宇宙意識の会」の謎の代表。

 

この一見ばらばらに見える問題はOCDを一つの軸として複雑に絡み合っていく。

さらに、物語が進んでいく中で明かされた真相は、とき子さんを悩ませ、そしてOCDの症状をかつてないほどに悪化させていく。

しかし、症状とともに自分の考え方をもう一度見直し、周りの助けを借りながら、自分を見つめなおしていくとき子さん。 

 

最後に、決断を下したとき子さんは、未来に向かって大きく巣立っていくのだ。

 

この自分を見つめなおしていく物語は、「クイズ」や「OCD」をテーマにすることで、わかりやすく、美しく紡がれていく。

その他にも、作品の中には細かなキーワードがそこかしこに散りばめられており、それらは最終回に向かって本当に美しく収束していくのだ。

この構成の素晴らしさを、ぜひ、皆さんにも見て感じてほしい。

物語の構成が素晴らしい作品は多く知っているが、ここまで身近な問題から大きく風呂敷を広げ、それらをきれいに、美しく収束させていく作品は、私の知る限りとても少ない。

 

 

③ 「自分の気持ち」を見直すきっかけにしてほしい

OCDというテーマを聞いただけでは、多くの人は自分には関係ない話だと思うかもしれない。

しかし、それは単に症状という表現型が異なるだけであって、このとき子さんの世界に対する感じ方や人間関係の悩みは、ほぼ全ての人に当てはまることだろう。

 

この作品は世間の様々な問題を取り上げている。

恋愛だけでなく、親子関係や宗教、OCDのような理解されにくい病気。

 

私を含め、大部分の人間は「社会的通念」、いわゆる常識という世間のルールに沿って生きており、自分の常識と外れたもの大しては異質なものとして捉えることが多い。

常識は社会で生きる上で重要なものだが、それが行き過ぎてしまうと「思い込み」となってしまう。

私たちが気づかないうちに身に着けている「思い込み」の枠は、私たちの見る世界を狭めてしまう要因ともなるのだ。

 

しかし、クイズ(問題)は、「思い込み」の枠がはまったままだと解くことができない。

一度この「思い込み」の枠を外して新たな視点から世界を見てみると、このクイズの答えが見えてくるのかもしれない。

 

本作品は、軽快なノリで気軽に先入観なく見ることができ、素晴らしいキャラクターに親密感を持ちながら、魅力的な物語によって心を動かされ、これらの問題を含む自分自身の在り方を改めて見つめなおさせてくれる素晴らしい作品だ。

 

全67話と話数は多いが一話一話は短いので、ぜひ、一度見てみてほしい。

それではまた。

 

chuun.ctv.co.jp